英語長文読解教室 伊藤 和夫(著) 1575円

多くの俊英を世に送り出している英文解釈本の名著
定評ある伊藤和夫先生の英文解釈参考書のソフト・カバー版になった新装版です。
旧版と内容は全く同じです。
私は、大学受験期に、この本によって語学への興味を触発され、志望大学に入り、
英語は勿論、ロシア語、中国語、インドネシア語など、それぞれの専攻言語を武器に、
現在、企業で活躍している学生を多く目にしています。
こういう爽やかな若い人たちを目にすると、所謂、「受験英語」なるものへの批判、
誹謗がいかに実体のない空論であるかを痛感致します。
<受験英語>というのは便宜的に付けられた名称に過ぎません。
受験生の方は、空虚な受験英語批判などに惑わされず、
この本のような優れた参考書でまず、英語をお勉強してください。
英英辞典は大学に入ってから、言葉のニュアンスをつかむために利用すればよいのです。
最初から英英辞典といくらにらめっこしてても、英語力はつきっこありません。
当然ですよね。
ちなみに、英英辞典が読めるようになるのを目的にした英文解釈の参考書など
存在しません。 そんな無駄な参考書は全く必要がないからです。
いずれにせよ、伊藤和夫先生の英語参考書はどれも秀逸です。
この本もその一冊、最高の五つ星です。
受験生に限らず、英語に興味をお持ちの社会人の方にもお薦めします。
難関国立大向け
受験生には少し内容が難しい感じがしました。評論文は内容自体が難しくて日本語でわかりづらいものがあります。難関国立大受験者には考えさせらていい本かもしれません。全部やるには根気が入ります。
参考書、という枠組みでは収まりきれないユニークな1冊
伊藤先生が『英文法教室』、『英文解釈教室』と並び『−教室3部作』の最後の本として編まれた本です。特色としては? 英文を左ページ、解説を右ページに配し、さらに右ページの左側にパラグラフ毎の要約を付け、東京大学の英語の第一問目や慶應義塾大学の文学部の『大意要約』問題に対応しようとしている。? 注意すべき点を英文を読む順番に従って、しかし「形」(この場合、文法・構文・機能語など)を重視しながら手短に解説している。? 先生ご自身が[訳]として付けている訳を(これがたいそうこなれた日本語です)どのようにして付けたのか、その理論的裏付けを『私の訳出法』という巻末の付録の形でつけている。 という3点にあると思います。
出版当時『英語大意要約問題演習』(駿台文庫)は出版されていませんでした。しかし、東京大学の第一問にどういう対策をしたらよいでしょうか、という質問は、駿台が当時から東京大学を受ける人の多い予備校だったということを考えると、多かったに違いありません。この本はその質問に対する伊藤先生の一つの回答だった、ということは想像に難くありません。
伊藤先生は生前に「英文は、大文字から始まってピリオドで終わるまでにその文をすべて理解していなくてはならない。」ということを、常々おっしゃってましたが、この本も一貫してこの考え方が通されて、解説されています。ただしこの説明のレベルはある程度英語を読んだことのある人を対象としたものであり、残念ながら誰が読んでも解るほど親切ではありません。
一つは左ページの英文の進み方に右ページの解説のスペースがどうしても追いつかず、やむを得ず、という事情もあったと思います。が、やはり伊藤先生の想定している読者が英語のできる早稲田大学や慶應義塾大学、東京大学を受ける人以上のレベルの読者であることが大きいでしょう。
伊藤先生の英文への対し方は、奥井潔先生(伊藤先生と長く同時期に駿台の教壇に立たれていて、東洋大学の教授でもあった方。昔の駿台の名物講師でした。)のような、文章の周辺知識をも総動員した、深い深い『読み』ではありません。しかし、与えられた英文そのものから順番を追ってひたすら正しく理解していこうという、『形からいかに英文を正しく読むか』という思想がビンビン伝わってくるような、キれのある解説になってます。
[私の訳出法]は伊藤先生の翻訳の経験が結晶した読むに値する論文だと思います。巷で出ている翻訳理論の本でこれだけ簡潔・明快に関係代名詞の訳出法を述べた文章は私は知りません。大学生活、さらに中途入社の会社の入社試験(英文和訳問題がありました)でお褒めにあずかったのは偏にこの文章に負っています。
まとめると、「大学に入って一般教育の英語の文章を読まされているけれど、つまんないな。もっと英文に日本語でヒントが付いていて、訳が付いていると、ちょっと多く読めば、訳がいらなくなってくるんだろうな」、と予感している方以上のレベルの方が読むべきでしょう。受験参考書、という枠組みでは収まりきれない内容を持った、ユニークな1冊です。
そのまんまだが・・・
表紙以外は旧版と全く変化なし。旧版を既に持っており、その上で改訂版に期待していた者からは少しがっかりであるが、そもそも旧版自体の質が相当高いので、やはり評価は高くなる。著者の伊藤和夫氏は、気持ちいいほどに本質をついた読解法を展開してくれる。ゆっくり読めないものは速く読んでも読めない、ただひたすら読めというのは教育ではない。パラグラフ・リーディングや論理マーカー、スキーマ理論、多読・速読法など軽佻浮薄な受験テクニック(読解テクニック)が横行する中、彼の著書が復刊されるのは喜ばしい限りである。文法と論理的思考力に基づいた英文読解の真の王道をとくとご賞味あれ。
僕にとって。
もう少しまとめてほしかった。